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ひまわり

ひまわり ドラマ

映画音楽を聴くだけで、その映画のシーンがよみがえったり、感情があふれ出してくる、
そういう作品は多い。
映画『ひまわり』のテーマ♪Loss of Loveも、きっと映画は観たことがなくても、耳にしたことがある人は多いことだろう。
そして、そのメロディーを聴くだけで、やるせない思いになるのだ。

この映画は、恋愛映画の金字塔とよく冠がつけられている。
「戦争で引き裂かれた男と女の悲しい愛の物語」とある。
なんとなくしっくりこないが、それはひとまず置いておいて、
この映画がその後生まれるたくさんの恋愛映画の超スタンダード的存在の一つになったことは、
映画を見終えた後に納得する。
同時にこのヘンリー・マンシーニの音楽も、悲恋をイメージするメロディーのスタンダード的存在であると感じた。

1970年に生まれた映画だ。これにとても驚いた。
もっと昔の作品だと勝手に思い込んでいたのだ。何度も修復がされ、半世紀の時を経て50周年HDレストア版が制作され、2022年も各地で上映されている。
2022年に上映されているのは単に周年を記念したからではない。
この映画のロケ地が侵攻を受けているウクライナであることからだ。
侵攻が始まった当初、ひまわり油が買い占められたというニュースも聞いた。
だから、この音楽を聴くと、恋愛よりも戦争が浮き立ってイメージされるという現実が今、目の前にある。それでいいわけがない。やるせない気持ちはちゃんと抱えたまま、名作『ひまわり』を観る。

イタリア、ナポリの娘 ジョバンナ(ソフィア・ローレン)とアントニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)は海岸で出会い恋に落ちる。
アントニオはまもなく戦争に行かねばならない。
結婚すれば休暇がもらえる、精神疾患を疑われれば除隊できるかも。
アントニオはジョバンナと一緒にいるために画策するが、それはうまくはいかず戦地へ。
ミラノ駅でジョバンナは夫の帰りを待つことを約束し、見送る。
しかし、戦争が終わっても夫は帰っては来ない。ただただ、夫の帰りを信じて待っていたジョバンナは、夫を探しにソ連へと向かった。
ウクライナの広大に広がるひまわり畑の下には、戦争で犠牲になった人が数多く眠るという。
その話を聞いてもなお、夫の生存を信じアントニオを探しつづけるジョバンナ。
二人は再会を果たすが……。

ソフィア・ローレンが、明るく奔放なイタリア娘時代から、夫を待ち、待ち続け、再会の果てに知る現実を目にする段階を、ビジュアルも含めてまるで別人のように演じる姿が印象的だ。
義母に対しても、強気で凛とした発言をするが、グッと力を入れて立っている姿は、どこかをツンとすると一気に崩れたり、折れたりしてしまいそうな様子をはらんでいる。

マルチェロ・マストロヤンニも出会った時は、ザ・イタリアの色男。
しかし、戦地で、また終戦後に体験したであろう殺戮や受け入れがたい現実を経たアントニオの暗さや重い表情が、戦争の恐ろしさ、無意味さを示し、憎む気持ちを膨らませる。

この映画を観ながら、何食べる?
いや、食欲なんてあるの? と言われると返す言葉がないが、
人は楽しくても悲しくても食べる。そして生きる。
出会ってまもなくの2人の食事シーンと、ジョバンナが一人で食べるシーンのギャップもすごい。
後者はただ口に入れているだけで、味などしなかったのだろうと思う。

くるみゆべしをセレクトした。
甘い。けれど、ただただ甘いのではなく、あまじょっぱい。
もちっとしている。けれど、ふんわりもちっとしているというよりは、ねっとりもちっとしている。
風味がいい。けれど、くるみの香りはよいが、口の中でゴツッとした違和感もくれる。
ジョバンナは味わいなどできなかっただろうけど、
私たちはしっかりと味わいながら、映画を最後まで見届けよう。

そして、この作品が恋愛映画の金字塔という表現でいいのかどうかは、
それぞれが考えることにしたい。
(Kuri)
ひまわり

映画「ひまわり」

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