新しい一年が始まる。
新しい元号に変わる年が始まる。
そんな年の初めに見たいのは、映画「ドリーム」。
人類の宇宙への道を切り開いた人たちの中に彼女らはいた。
キャサリンは天才的な数学者。NASAで働いている。
優秀な人がいい仕事をするとは限らない。その逆もある。
でもキャサリンの場合、その才能をもっと生かせるのにそうさせない社会があった。
時は1961年。そう遠くない昔だ。58年前とすれば、遠い昔と思う人もいるのかもしれないが、 この映画を観て、たった58年前のこれが現状だったのかと、改めてなんとも言えない気持ちになった。
そうさせない理由は、キャサリンが白人ではないから。
同じ理由で、仲間のドロシーもメアリーもその他の黒人女性たちも同様の扱いを受けていた。
ドロシーは管理職の道を閉ざされ、メアリーはエンジニアになるための学位という門を閉ざされていた。
時代は動いていく、宇宙開発は当時のソ連とのし烈な競争の最中にあったため、 やはり彼女たちの力は必要とされるべきなのだ。
キャサリンは声をあげた。 今の時代に生きている私たちからすれば、「もっと早く声をあげたっていいのに……」
そんな風にも思えてしまう前半の繰り返し。
それがなんともほろ苦くて、悔しくて。
でもキャサリンたちは、しっかりと彼女ら自身の足で立ち、生きることに絶望しない。
未来にも絶望していない。
職場に向かう車の中、バーティーや食事のシーンでは、ガールズトークも楽しむし、 ごきげんなメロディーも流れる。
どうせなら眉間にシワを寄せて映画を観るのはやめよう。
彼女たちに途中でそう気づかせてもらって、オランジェットを用意した。
オレンジなど柑橘の皮を砂糖漬けにしたあれをチョコレートでコーティングしたものだ。
ピールのほろ苦さと、それをコーティングする砂糖が大人の味で、 コーティングしているチョコレートはダークチョコでもミルクチョコでもお好みで。
どちらかと言えばダークがおすすめ。この映画にもダークがおすすめ。
ちなみに、手間がかかるけれど手づくりするとこれまた最高。
難解な数式を解いたような達成感も感じられるに違いない。
で、キャサリン、ドロシー、メアリーはどうなるかといえば、 決して扉が簡単に開いたわけではないけれど……。 と、ここでやめておこう。
キャサリンの上司役ハリソンに、お久しぶり感のあるケビン・コスナー、 ドロシーらの人事も扱う立場のスーパーバイザー・ミッチェルに、 いつの間にこんなに大人に?感のあるキルスティン・ダンストらが登場する。
彼らの眉間のシワも、オランジェットを口に運んだ時のような表情がやってくるということは やっぱり言ってしまおうかな。
公開当時、リケジョたちが絶賛、働く女性たちからの圧倒的支持を集めた!のような評判が立った。 それは宣伝戦略でもあるし、実際の声でもあったろう。
でもあえていうなら、「ドリーム」を観て男性や文系女子にこそハッとなってほしい。
いやいや違った。そんな風にカテゴライズしないで、来るべき新しいことに向かう勇気を得よう。
ほろ苦くて、スイートで、でもだからいいんだよねと。
(Kuri)