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RENT

ドラマ

ミュージカル『RENT』は、とても衝撃的な作品だ。
何がって、この作品の作詞・作曲・脚本を手掛けたジョナサン・ラーソンという人が、
舞台の開幕前夜に急逝するという、あまりにもドラマチックな出来事があったから。
オフブロードウェイでスタートした舞台は2カ月後にブロードウェイに行き、
以来、12年間のロングラン公演を実施。世界各国で上演が実現した。

映画は、2005年に制作され、キャストはアンソニー・ラップやアダム・パスカルなど、舞台のオリジナルキャスト8名中6名が出演したことでも話題となった。
そしてこの映画を監督したのは、あのクリス・コロンバス。
「ホーム・アローン」や「ミセス・ダウト」、「ハリーポッター」シリーズを手掛ける監督だ。

さて、さっそくだけれど、この映画のお供には、チョコヌガーバーを用意しよう。
そう、激甘なアレだ。
体にいいシリアルバーとか、ソイバーじゃなくて、ナッつぎっしりとか、キャラメルソースがねっとり、みたいな激甘なアレね。

ニューヨーク、イーストビレッジに暮らすこの物語の登場人物たちは、いわゆるクリエイター・アーティストの卵たちが多い。
マーク(アンソニー・ラップ)は映像作家、ロジャー(アダム・パスカル)はシンガーソングライター。
モーリーン(イディナ・メンゼル)はパフォーミングアーティストだし、エンジェル(ウィルソン・ジャーメイン・ヘレディア)はストリート・ドラマー。
ミミ(ロザリオ・ドーソン)は、ナイトクラブのダンサー。

わかりやすく言うと、彼らは生活が苦しい。家賃も滞納するほどに。
でも、夢があるんでしょ! とキラキラしたことを思いたくもなるが、時代は20世紀末。
巷には、HIV/AIDSという死の病が流行していた。あえて死の病と書いたのは、この病名が日本にも伝わってきた時の、知らないことによる恐怖をリアルで体験した世代でもあるからだ。
新型コロナの流行で、世界が恐怖に支配されたことにも共通していて、
そこには誤解や偏見が恐ろしいほどに数多く生まれていた。
今よりもセクシャルマイノリティーが理解されない世の中だった。
病の恐ろしさに加え、人々の無理解も人の心を蝕んでいく。

彼らは生と死に近い場所にいた。大切な恋人や友人を失う恐怖の近くにいた。
彼らが歌う「♪Seasons Of Love」は名曲だ。
1年 = 525600分をどう計る? と問いかける。作品の中で言えば、皆がそれを自問自答しているのだ。

もう少し人間関係を見ていこう。そうすると、悲劇だけではないことが見えてくる。
ロジャーは恋人を亡くして以来、あらゆることに前向きになれない。友人のマークは何かと気にかけてくれるが、HIVポジティブの彼の未来は明るいとは言えない日々だ。
そんな時、彼らが暮らすアパートでダンサーのミミと出会う。でも愛する人を失うのも失わせるのも怖いロジャーは葛藤する。

モーリーンはマークの元カノだ。彼女はバイセクシャルで、今は弁護士のジョアン(フレディ・ウォーカー)と付き合っている。奔放な彼女に振り回され、度々衝突もする二人。元カレのマークをライバル視したり意気投合したりもするほどだ。

マークとロジャーの友人で大学講師のコリンズもHIVポジティブ。
彼はある日、ストリートドラマーのエンジェルと出会い、恋に落ちる。彼女もまたHIVポジティブで、
自らの置かれた状況を静かに愛をもって受け止めるべく、ライフサポートの集会に参加する。

マークは映像作家として、彼らの運命を記録していくが、自分は傍観者でしかないという罪悪感を感じたり、なかなかクリエイターとして芽が出ないことへの焦りもあって……。

境遇や背景は異なっていても、彼らがとまどい、絶望したり、やけに楽観的になれたり、不安に駆られたり、無鉄砲になったりするいろいろな感情の波は、とてもリアルで、理解の範疇にある。

チョコヌガーバーをセレクトした理由は、
彼らの人生や足掻きに触れて消費する感情を高カロリーで補いたくなるからかもしれない。
それと、彼らにはたぶん、バランスの取れた優雅な食事より、時間も忘れて何かに没頭したり、
湧き出てくるものを一瞬たりとも逃したくないという気持ちのほうが大事だと感じるからだろう。

525600分をどう生きるか。この映画を観ながら、しっかりカロリー補給したら
きっとそれを真正面から考えたくなるはず。
(Kuri)

 

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