みんな元気

By tabecine, 2016年4月29日

妻に先立たれ今は一人で暮らす男・父親が主役の映画。
いや、離れて暮らす成人した子ども達も含めた家族が主役の映画。
とりあえず今は答えはいらない。
「みんな元気」

今は広くなってしまった家の主、フランク(ロバート・デ・ニーロ)は、
子供たちが久々に集まる週末を心待ちにしている。
最高級の肉を選び、それを焼くためのバーベキューコンロを600ドルで購入してしまうほど。

高級なワインはどれかと店員に尋ねると、
「ドイツのフランス産ワインもあれば、フランスからきたイタリアワンもある」という、
なんとも皮肉な対応。
それでもフランクはご機嫌だ。

嗚呼、嫌な予感がする。
いや、予感ではなく、確実だ。

案の定、息子や娘から、忙しいことを理由に週末は行けないという、キャンセルの連絡が相次ぐ。
直接もせつないが、留守電に吹き込まれたそれは、あまりにせつない。
だからそんなに張り切ったりしないで、って言ったのに(いや、言ってないが)。

フランクは声を荒げたりはせず、ちょっと眉毛を下げて、困った顔をするだけだ。

せつなすぎるので、テーブルにミルフィーユを置こう。
サクサクとしっとりの組み合わせが絶妙で、キュートなイチゴが乗ったミルフィーユ。

子どもたちが来られないなら、自分が行こう、サプライズで!と思いついたフランクは、
持病の薬を持ち、飛行機を避けて、長距離バスで彼らの元を一人ずつ訪ねていく。

ミルフィーユをフォークで食べようとして、お皿をカツンと言わせたりして
しまったことはないだろうか。変に力が入ってしまうのだ。

子どもたちは、父親のサプライズ訪問に困惑する。
家族3人、仕事も順調なはずの長女、音楽家の長男、アクターの次女、
そして、芸術家になった次男。

ミルフィーユは、一枚ずつ生地をはがして食べると、カスタードとのバランスが崩れる。
バラバラじゃだめなのに。

父親のとった行動と、子どもたちの真実、そして彼らが気づいた思いとは……。

ミルフィーユの正しい食べ方は、倒して横にし、ナイフとフォークで少しずつ
切り分けながらがいいのだそうだ。

小津安二郎の「東京物語」へのオマージュとして作られた
ジュゼッペ・トルナトーレ監督のイタリア映画「みんな元気」を、
カーク・ジョーンズがリメイクした今作。
その重なりも、ミルフィーユみたいだ。
(kuri)